旧落石無線送信局跡(現 池田良二スタジオ)
北海道根室半島南部の太平洋側、サカイツツジの自生地となっている草原のなかに佇む鉄筋コンクリート造の要塞のような重厚な建築物。もとは旧逓信省管轄の落石無線電報局として1908年に開局、幾度かの火災・戦災に見舞われ、1925年に現在の姿に再建された。建物自体が北米航路の要衝である根室の要としてさまざまな歴史的出来事に立ち会ってきた重要な生き証人でもある。たとえば、1929年には、ヤクーツク飛行中のドイツ飛行船ツェッペリン泊号と日本初の交信に成功、また、1939年、太平洋無着陸飛行中のリンドバーク機を無線により誘導、偉業達成を陰で支えた。現在は根室出身の銅版画家、池田良二氏(武蔵野美術大学教授)の個人スタジオとして廃墟の状態からの改修途上にある。かつて、無数の船舶や航空機だけでなく、幾多の場所との交信を繰り返してきた、いわば、外に向けて無限に対話が開放されていた特殊な空間、限りなくパブリックな場であったといえる。
落石無線電報局沿改史 明治41年12月26日 根室郡和田村大字落石村落石大岬に落石無線電信局開局 落石無線電報局沿改史より抜粋、一部加筆 |